「万智の交遊録」第15回は、指揮者の岩城宏之さんです。

私は、仕事の窓口を「東京コンサーツ」というところにお願いしています。クラシックの音楽家のマネジメントや、演奏会、映画音楽などを手がけているところです。NHKの大河ドラマの音楽もよく作っています。(あ、それで見たことある、と思う人も多いかもしれませんね)。で、「事務所は東京コンサーツ」と言うと、よく不思議そうな顔をされます。物書きのあなたが、なぜ音楽事務所なの?、と。
教師を辞めて、いわばフリーターになったころ、自宅の電話で仕事を受けていました。が、退職のことが大きく報道されたこともあって、毎日毎日たくさんの電話がかかってきます。電話をとって用件を聞くだけでも大変ですが、さらにお断りしなくてはならないものになると、長い長い電話になってしまいます。かなりストレスのたまる毎日で、やがて体調を崩してしまいました。
十数年前、「週刊朝日」の対談でお目にかかって以来、ずっと親しくさせていただいていた岩城さんが、そんな私の様子を見て、「やはり窓口になるところが必要ですね。ちょっとジャンルは違うけど、うちでよかったら」と声をかけてくださったのです。助かりました。岩城さんは、言わずとしれた世界的な指揮者です。が、エッセイを書いたり、対談をしたりと、わりと私とも近い仕事もされています。そんなこともあって、私はとても快適に仕事を選べるようになりました。
そもそも、なぜ対談でお会いしたかというと、入院していた岩城さんに、お見舞いとして『サラダ記念日』が届けられ、とても気に入ってくださった岩城さんが、ちょうど七月六日サラダサーバーを私にプレゼントしてくださったのです。そんなことがあったので、ぜひお目にかかりたかったのでした。(以前書きましたが、五回で終わった連載対談の、第一回のゲストが岩城さんでした)。
日本におられることの少ないかたですが、年に何度かは、夜ごはんを食べたり、一緒に句に参加したりしています。たぶん私は、岩城さんといて、唯一音楽の話をしない友人でしょう。それが、とてもよいらしいです。たいていの人は、せっかく岩城先生にお目にかかっているのだから、とばかり、音楽に関する質問をし、タチの悪い人になると蘊蓄を披露したりするらしいのです。毎日音楽につかっているプロにとっては、そんなの、うんざりですよね。私は、正直言って、音楽が一番の弱点です。だから話をしないというよりは、できないのですが……。
第14回 野田秀樹さんへ
第13回 鴻上尚史さんへ
第12回 吉永小百合さんへ
第11回 森啓次郎さんへ
第10回 黛まどかさんへ
第9回 小林恭二さんへ
第8回 松本侑子さんへ
第7回 辛島美登里さんへ
第6回 稲越功一さんへ
第5回 森雪之丞さんへ
第4回 新井満さんへ
第3回 岡本真夜さんへ
第2回 椎名桔平さんにパーティーで会う!へ
第1回 岡部まりさんへ
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