「万智の交遊録」第26回は、劇作家・演出家・俳優の松尾スズキさんです。

世田谷パブリックシアター・シアタートラムの楽屋で
松尾スズキさんは、ただいま大ブレーク中の、演出家・劇作家・俳優さんです。彼の率いる「大人計画」の芝居を初めて見たのは、95年の春、吉祥寺の小さな劇場でした。正直言って、なんか悪いもん見ちゃったなあ、というのが第一印象。人間の心の底にひそむ邪悪なものやどろどろしたものが、これでもか、これでもかと、はらわたを引きずり出すような手つきで、つきつけられます。でも、不思議なほど後をひく芝居でもありました。
以来、ずっと気になる松尾さんでしたが、「ふくすけ」という芝居を見た日には、ずっとこの人についていこう!と思ったことです。
野田秀樹さんの「パンドラの鐘」では、俳優としての松尾スズキの魅力を再認識させられました。
好き好きと言いふらしていると、ご縁もできるもので、今年の「キレイ」という公演では、プログラムに一文を書かせていただいた私です。そして幕があいてみると、劇中で、私の短歌がギャグで使われているような場面
もあり、うれしはずかしの観劇と、あいなりました。とくに、そのセリフを、大好きな阿部サダヲさんが言ってくれたことも、嬉しかったです。
| ハリコナ「損得、損得って。世の中そればかりじゃないだろう。……ガム出しなさい! 人が説教してるときはガム出しなさ……おっと、噛んでないものって言いたいんだろ、『噛んでま千円』とか言いたいんだろ! オ見トオシサ! 『噛んでない、そのガムまでも差し出せと、言いたい僕と言われてる君』。そんな俵万智な気分さ。さ、ガム出しなさい! ガンダム出しなさい」(『キレイ 神様と待ち合わせした女』白水社刊より) |
写真は、現在上演中の野田地図番外公演「農業少女」を見に行った時のもの。この芝居では、松尾さんの怪しさとカリスマ性と愛らしさとが、存分に発揮されていて、大満足でした。実際にお会いすると、とてもシャイで、内に秘めたものを、あまり出されないのですが、そこがまた惹かれます。
芝居だけでなく、「鳩よ!」に連載中の小説や、「大人失格」「ぬるい地獄の歩き方」等のエッセイでも、異彩
を放っている松尾さん。大人計画のホームページに連載している「酔って書かない夜はない」も、私の愛読ページです。これから彼がどこへゆくのか、一人のファンとして、ずっと見守りたいと思っています。
ちなみに、松尾さんも私も、1962年生まれ。私の友人ではドリアン助川さん、平田オリザさん、横内謙介さんが、たしか同年生まれです。他には、松田聖子、オウムの上祐某、宮崎勤、新潟で少女を監禁していた男、といった人たちが、この年の生まれだと聞きました。そのことが何か意味を持つのか持たないのか、わかりませんが。
第25回 永作博美さんへ
第24回 田崎真也さんへ
第23回 ドリアン助川さんへ
第22回 林真理子さんへ
第21回 鷺沢萠さんへ
第20回 丸谷才一さんへ
第19回 北杜夫さんへ
第18回 星野富弘さんへ
第17回 平地勲さんへ
第16回 南こうせつさんへ
第15回 岩城宏之さんへ
第14回 野田秀樹さんへ
第13回 鴻上尚史さんへ
第12回 吉永小百合さんへ
第11回 森啓次郎さんへ