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「万智の交遊録」第34回は、小説家・劇作家・演出家の柳美里(ゆう・みり)さんです。

柳美里さんのこと

 先月(2002年3月)の十七日、柳美里さんは、東亜ソウル国際マラソンに参加し、みごと完走しました 。去年からトレーニングをしていたとはいえ、初めてのフルマラソンで走りきるなんて、すごい体力と精神力だなあと思います。まもなくはじまる朝日新聞の連載小説で、マラソンランナーを主人公にするということで、自分自身が走るということを思い立ったそうです。二月に、温泉旅行に行ったときも、マラソンのことで柳さんは頭がいっぱいのようでした。この旅行は、とある飲み屋の常連客とその店のママで温泉につかろうという楽しい会で、夜中には混浴してしまうほど盛り上がりました。柳さんは、旅館に着くと、いの一番に浴衣に着替え(これがよく似合って、美しい!)、夜も朝も何度も積極的にお湯につかっていました。つられて私も、けっこうつかり(ふだんは、夜一回朝一回ぐらい)、つるつるのお肌になったような気がします。
 最初に何かのパーティでお目にかかってから、もう五、六年になるでしょうか。柳さんの言葉に、心惹かれていた私は、わりと積極的に話しかけた記憶があります。その後も、私の短歌の後輩たちが柳さんにインタビューをしたいと言いだして、無理をきいてもらったり(この経緯については、柳美里著『言葉のレッスン』の角川文庫の解説に詳しく書いてあります)、共通の親しい編集者がいたこともあって、その編集者が幹事になってくれて、仕事ぬきの楽しいお酒を飲むようになりました。最近では、メールのやりとりも、ちょこちょこしています。
 柳さんの作品は、どこを切っても血が出るような、そんな迫力があって好き。言葉への命のかけかたに共感します。某編集者の観察によると、お酒の席などで「恋人と別れたとか、何年も彼氏がいないとか、そういう不幸な話が出ると目がきらきらと輝きはじめ、夫婦仲が安定しているとか、恋が盛り上がっているとか、そういう幸せな話になると、死んだ魚のような目になる」のが特徴だとか。うーん、確かにそうかもしれない。たぶん柳さんは、人間の心のなかの闇のようなものに、興味がある作家なのだと思います。
 ものすごくスリムなのに、ケーキが大好きというのも意外でした。髪のまとめかたや、お化粧もすごく上手ですが(人に教えてあげられるぐらい)、すっぴんの柳さんは、ほんとに綺麗で、その肌にすいこまれそうになります。
 冒頭のマラソンの話にもどりますが、まもなく新聞連載がはじまるとのこと。ソウルでの経験が、どう作品に生かされるのか、一人の読者として心から楽しみです。

 
第33回=東儀秀樹さん
第32回=山本容子さん
第31回=小泉純一郎さん
第30回=福島敦子さん
第29回=加賀美幸子さん
第28回=安野光雅さん
第27回=江國香織さん

第26回=松尾スズキさん
第25回=永作博美さん
第24回=田崎真也さん
第23回=ドリアン・T・助川さん
第22回=林真理子さん
第21回=鷺沢萠さん

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