「万智の交遊録」第36回は、作家の立松和平さんです。

立松和平さんのこと
立松さんの小説に最初に出会ったのは「遠雷」でした。力強くて、人間の匂いがぷんぷんして、圧倒されました。つづく「春雷」「雷獣」も、夢中になって読みました。
『サラダ記念日』の担当編集者である長田さんを通じて、ご本人とは知り合いました。ニュースステーションで一躍有名になった、あの朴訥で魅力的な語り口は、ふだんの立松さんそのものです。つまり、テレビカメラが回っていようといまいと、立松さんは立松さんなのでした。
以前、釧路湿原で、タンチョウの世話を焼いている御夫婦を、取材で訪ねたことがあります。奥さんは、気立てのやさしい、すぐに打ち解けてくれるタイプの人でしたが、ご主人のほうは、なかなか気難しく、簡単に話をしてくれそうにありません。焼酎を、どーんと置いて、もくもくと飲んでいる──といった人なのです。私も負けずに、焼酎を飲みましたが、ふとしたきっかけで立松さんの話になったら、ご主人が、急にやさしい表情になりました。「いや、あの男は、たいしたもんだ。信用できる男だ」というようなことを、話してくれるのです。立松さんは、すでに何度も釧路に通い、写真集まで出しているほどです。が、そのこと以上に、この親父さんの心に、ここまで迫った立松さんに、私は打たれました。
雑誌やテレビの対談でお目にかかったりすることも多く、昨年は、ついに共著まで出版することができました。このサイトでもご紹介した『新・奥の細道』です。企画・担当者は、河出書房新社の長田さんでした。人と人の縁を感じますね。
実は、私は、お嬢さんの桃子さんとも仲良しです。彼女は、とても素敵な絵を描く人で、今年の個展はほんとうに素晴らしく、思わず二枚も作品を買ってしまいました。今、私のリビングには、彼女の絵があって、毎日幸せな気持ちを運んでくれています。
昨年からはじめた、新宿某所のバーでのアルバイトも、彼女の紹介でした。本業の絵のほうが忙しくなったので、あとがまを探している……という話を聞き、あとがまとまではいかないけど、月に二、三回なら、と始めたのです。カウンターの中の人になるというのは、酒飲みで人間好きの私としては、長年の憧れでした。
まだ、そのお店で立松さんとはお会いしていませんが、いつかきっと、来店してくれることでしょう(!?)
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