「万智の交遊録」第39回は、作詞家の荒木とよひささんです。

荒木とよひささんのこと
数年前、共通の知人を介して、お酒を飲んだのが出会いでした。カッコいい50代を絵に描いたような人で、それでいて気さくで、話題が豊富。ときどき顔をのぞかせるやや古風な男の考えかたも、同世代なら、「ちょっと待ってよ」となるところですが、なぜか荒木さんだと、男の人って、案外そうかも……と思えてしまうから、不思議です。
じつは、よく考えてみると、ご本人にお会いするまえに、私は、たくさんの荒木さんの作品に出会っていました。小学生のときに愛唱していた「四季のうた」は彼の作詞ですし、「サラダ記念日」にある「愛人でいいのとうたう歌手がいて言ってくれるじゃないのと思う」という一首は、荒木さんの作品から、ヒントを得たものでした。
お互いを、現実とは違う立場に設定して、手紙のやりとりをするという遊びを、この二年ほどつづけてきました。手紙のなかでは、私たちは恋人同士なのです。で、そのなかで、旅をしたり、ごはんを食べたり、議論をしたり……するわけです。現実には、二人だけで会ったことは、一度もないのですが、この大人の遊びは、なかなかスリリングで楽しいものでした。
この時代に、あえて手紙というところが、よかったです。ボタンひとつで届くメールも便利ですが、「間」を持った手紙で、心のゆとりを楽しむのも、いいものです。しかも、私たちがしていたやりとりというのは、現実にはなんの役にも立たないもの……そこが、気にいっていました。
このやりとりを「本にまとめましょう」という人があらわれて、「えっ、まじ!?」とも思いましたが、いい年をして、こんな言葉の遊びをしている二人がいるというのを、おもしろがってくれる人がいるのなら、それもいいかなと思いました。タイトルは、「恋文」といいます。
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