「万智の交遊録」第6回は、写真家の稲越功一さんです。(6月2日)

『花時間』という雑誌で、短歌と写真のセッションを連載したのが、出会いでした。毎月、同じ花をテーマに、私は短歌とエッセイを書き、稲越さんは写真を撮る、という企画です。この連載は二年間続き『花束のように抱かれてみたく』(同朋社刊、定価¥1850+税)という、とてもきれいな本にまとまりました。稲越さんが撮る花たちは、私にはすべて女性に見えます。言い換えると、稲越さんの前では、花さえも、女性のような表情を見せるということでしょうか。
日常生活の場面でも、とってもダンディな人です。原宿のオフィスには、おしゃれな花や小物がいっぱいで(トイレにはシャネルの石鹸が……)、とにかく気分のいいモノたちに囲まれていたいという彼の意識が窺えます。手紙を書くときには、ドイツの青い色鉛筆、靴は某メーカーの白いスニーカー、と決まっています。このスニーカーは、稲越さんのトレードマークで、どんなびしっとしたスーツのときにも、足元はこの靴なのです。シンプルで履きやすいということですが、すでに製造が中止されている型なんだそうで、中止されると決まったとき、百足買いだめたと聞いています。
以前、稲越さんのふるさとの飛騨・高山で、対談をしたことがありました。そのときもこのスニーカーだったのですが、「今日は特別な日だから、新品をおろしました」と、おニューの足元。こういうのって、女性はドキドキしますよね。
お酒もけっこうご一緒することが多く、たいてい私のほうが陽気になり、稲越さんが静かにニコニコしている、という感じです。以前、スポーツ紙のインタビューで、「酒の飲み方がキレイな女性」ということで、稲越さんが私の名前を挙げてくださっていました。嬉しかったです。バーのとまり木では、必ず立ったまま、というのも稲越スタイル。ね、とことんダンディな人でしょう?
第5回 森雪之丞さんへ
第4回 新井満さんへ
第3回 岡本真夜さんへ
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第1回 岡部まりさんへ
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