「万智の交遊録」第9回は、作家の小林恭二さんです。

小林さんとは、『サラダ記念日』を出版する以前からのお付き合いですから、かれこれ12、3年になるでしょうか。小説家であると同時に、俳句や短歌への造詣が大変深く、岩波新書から出ている『俳句という遊び』や『短歌パラダイス』で、その名をご存じのかたも多いかと思います。今年は『カブキの日』という長編小説で三島由紀夫賞を受賞されました。
小林さんが「小説新潮」に連載していた「天才の診断書」というコーナーで、インタビューを受けたのが、出会いでした。そのころ私は橋本高校の教師をしていて、短歌の世界では角川短歌賞を受賞したものの、一般的にはまったく無名の存在でした。ですから、そんな普通の本屋さんに置いてある老舗の雑誌に出るなんて、もちろん初めてのことで、「私なんかで、いいんでしょうか?」という感じで、おずおずと出かけていったのを覚えています。
小林さんは、短歌雑誌に載っていた私の短歌を、とても面白がってくださり、私はおおいに励まされました。そして、そのインタビュー記事が、多くのマスコミにもとりあげられるきっかけとなりました。『サラダ記念日』を出版してくれた編集者も、もちろんその記事を読んでいました。そしてその「小説新潮」に載った写真が、実は『サラダ記念日』の表紙となったのです。(サラダ記念日秘話)
それ以来、もっとも身近でもっとも温かい、そしてもっとも厳しい読者として、小林さんには、見守られてきました。『短歌パラダイス』という本では、小林さんが仕掛け人となった「歌合わせ」に参加して、題詠が苦手な私はおおいに苦戦しましたが、そのときに作った歌は、『チョコレート革命』でも大事な歌となりました。
幾千の種子の眠りを覚まされて発芽してゆく我の肉体(題「芽」)
妻という安易ねたまし春の日のたとえば墓参に連れ添うことの(題「妬む」)
えっこの歌が題詠なの、と思われるかもしれませんが、実はそうなのです。 小林さんとは今『現代短歌辞典』という21世紀へ向けての壮大な仕事を、ご一緒しています。こう書くと、とても真面目なお付き合いのようですが(もちろん真面目なのですが)、旅の雑誌で温泉に行ったり、お酒を飲んだり(小林さんは、大酒豪)、楽しいこともいっぱいです。
第8回 松本侑子さんへ
第7回 辛島美登里さんへ
第6回 稲越功一さんへ
第5回 森雪之丞さんへ
第4回 新井満さんへ
第3回 岡本真夜さんへ
第2回 椎名桔平さんにパーティーで会う!へ
第1回 岡部まりさんへ
![]()
![]()
![]()
![]()
チョコレートBOXへ戻る|万智の交遊録目次へ戻る