ニューヨークと言えば、ミュージカル。もう十年以上前になりますが、『グランドホテル』という作品を観て、私は目覚めました。それまでは、セリフで言えばひとことですむものを、なぜ歌ったり踊ったりしなきゃなんないの? と懐疑的だったのですが。
前回のニューヨーク旅では『キャッツ』『美女と野獣』などの定番もさることながら、オフブロードウェイの『ブルーマン・イン・チューブ』というハチャメチャなパフォーマンスが、とても印象に残りました。そこで今回は、ニューヨーク在住の友人であるムラタさんに、「ブルーマン的なやつ」というリクエストをしてチケットをとっておいてもらうことにしました。
ムラタさんは、国連に勤めていて、ドアマンがいたり住人用のジムがあったりする高級マンションに住んでいます。クリスマスには、ロビーで生演奏なんかがあるそうです。彼の今回のオススメは『デラガルダ』というパフォーマンス。観客は、舞台も何もない、ただの箱のような部屋にぎゅうぎゅう詰め込まれ「ん?」と思っているうちに、天井が影絵状態になって、はじまります。紙をはじくかすかな音や、不思議な人の動きが、とても幻想的。私は、野田秀樹さんの『パンドラの鐘』のオープニングを思い出しました。あまり詳しく書くと、これから観る人に悪いのですが、その後は、天井が破れて、人は落ちてくるわ、水は降ってくるわ、すごくダイナミックな展開となります。
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ムラタさんには、ニューヨーカー御用達の人気店でのブランチに連れていってもらったり、クリスティーズやサザビーなどのオークションを案内してもらったり、なかなか通
なニューヨークを見せてもらいました。ブランチのメニューに、白身だけの目玉焼きというのがあって、びっくりです。黄身のコレステロールが気になる人向けらしいのですが、そういうの目玉
焼きっていうのかな? 昔なにかのコマーシャルで「アイスコーヒー、コーヒー抜きで」っていうのがありましたが、なんかそれに近いですね。卵好きの私は、サーモンスクランブルエッグに大満足しました。
中心街の歩行者天国を歩いていると、中国の人たちが青空マッサージ店を開いていて、なかなか繁盛しています。日本でも流行りのクイックマッサージの類で、顔を穴につっこんで斜めに座る椅子は、「こりとれーる」の椅子にそっくりでした。私はマッサージに目がなく、普段でも、ちょっと時間があると「10分1000円」などの看板につられてフラフラと入ってしまいます。足ツボも大好きだし、ホテルでも必ず頼みます。で、もちろん、ニューヨーク青空マッサージも試してみました。屋根もなく、道ゆく人たちから丸見えですが、10分10ドルと、やや強気の値段。腕は……まあまあという感じかな。けっこうニュヨーカーもハマッているようでした。
中国の人たちは、ほんとうにたくましく、道端で怪しい習字を売っている人もいました。ニューヨークでは、けっこう漢字が流行っているらしく、へんてこなTシャツを着ている人も見かけます。「私はバカな外人です」とかって胸にプリントしてあるのを見ると、ちょっとかわいそう……。でも、そういう漢字話で、もっと悲しい話も聞きました。
ドリアン・T・助川さん(彼も私の友人で、この四月からニューヨークに住んでいます。交遊録第23回参照)は、ある日、漢字好きのアメリカ人から入れ墨を見せられたそうです。
「おまえの国の名前を、俺は彫ったぜ」──たぶん彼は、そんな親しみを表現したかったのでしょう。が、彼のその入れ墨は「日本」ではなく「本日」だったというのです。「ほんじつ」……。Tシャツなら脱げばすみますが、入れ墨となると、ちょっとどうでしょう。彼が真実を知る日はくるのでしょうか。胸が痛みます。
(つづく、第3回へ)
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